経営者・人事担当者へ
事業所が増えると顧問料も増えるのはなぜ?
法律は「法人」ではなく「事業所」に適用されるからです
複数の事業所を持つ法人の経営者の方から、こんな質問をいただくことがあります。
「うちは1つの会社なのに、事業所が増えると顧問料が上がるんですか?従業員の総数で契約しているなら、どこにいても同じじゃないですか?」
おっしゃりたいことはよく分かります。でも、労務の世界では、法人が1つでも事業所が複数あれば、社労士の仕事は事業所の数だけ増えます。その理由を、今日は丁寧にお伝えします。
THE RULE
労働法は、「事業所」を単位に動いています
労働基準法をはじめとする労働関係の法律は、法人(会社)を単位として適用されるのではなく、事業所ごとに適用されます。
事業所とは何か。行政の定義によれば、「一定の場所において、相関連する組織のもとに継続的に行われる作業の一体」を指します。要するに、「場所」が基本的な単位です。
本社・支店・営業所それぞれが別の場所にあれば、原則として別々の事業所として扱われます。法人としては1つでも、労務の手続きは事業所の数だけ発生します。
WHAT'S NEEDED PER OFFICE
具体的に、何が事業所ごとに必要か
事業所が増えるたびに、以下の手続きが増えていきます。
労働保険の成立・年度更新
労災保険・雇用保険の保険関係は、個々の事業所単位で成立するのが原則です。事業所を新設した際には、その事業所を管轄する労働基準監督署に成立届を提出します。
毎年6月に行う年度更新(保険料の確定・概算申告)は、事業所ごとに前年度の賃金データが必要になります。ここで実務上、工数がかかる場面があります。
事業所ごとに賃金データの形式や集計方法が異なることがあり、本社が一括で取りまとめているケースはむしろ少数です。各事業所からデータを収集し、整合性を確認して申告書にまとめる——この作業が、事業所の数だけ繰り返されます。
36協定の締結・届出、就業規則の届出
時間外・休日労働に関する36協定は、事業所ごとに労使で締結し、管轄の労働基準監督署に届出なければなりません。法人として1通作って終わり、ではないのです。
就業規則も同様です。常時10名以上の従業員がいる事業所では、その事業所を管轄する労働基準監督署への届出が必要です。事業所が3つあれば、3か所に届け出ます。
労災発生時の対応は、事業所の管轄で
万が一、労働災害が発生した場合、請求の窓口はその事業所の所在地を管轄する労働基準監督署です。労働保険を本社で一括管理(継続事業の一括)している場合でも、労災の請求手続きは発生した事業所の管轄署で行います。
事業所が複数あれば、それぞれの管轄署・担当者との関係が生まれます。何かあったときに「どの署に連絡するか」を把握して動けるのも、社労士の役割のひとつです。
EXCEPTION
「別の場所=別の事業所」と
ならないケースもあります
原則は「場所が違えば別の事業所」ですが、例外があります。場所的に分散していても、規模が著しく小さく、独立した事業所という程度の実態がない場合は、直近上位の機構(本社・主たる事業所)と一括して1つの事業所として取り扱われます。
判断の基準となるポイント
規模が著しく小さいこと(人数・業務量)
本社・上位機構との組織的なつながりが強いこと
独立した事務処理能力がなく、独立した事業所としての実態がないこと
小規模な出張所や連絡所がこれに該当します。ただし、どちらに当たるかは実態によって判断が異なるため、微妙なケースでは管轄の労働基準監督署に問い合わせて確認しています。
「うちの出張所は事業所に当たるのか?」という判断も、社労士に相談できる場面のひとつです。
TAKEAWAY
「法人として1つ」と
「事業所として複数」は、別の話です
顧問料が事業所の数に応じて変わるのは、社労士が事業所ごとに届出・管理・対応を行うからです。法人として1つでも、手続きの窓口は事業所の数だけあります。
「事業所が増える=社労士の仕事が増える」という構造をご理解いただいたうえで、顧問契約の設計をご相談いただけると、お互いに無理のない形で進められます。
事業所の数や規模に応じた顧問料の考え方については、お気軽にご相談ください。
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