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制服への着替え時間は労働時間に入る?三菱重工業事件の判例から医療・介護現場の実務を社労士が解説

医療・介護の労務

着替えてから打刻、させていませんか?
制服への着替えは「労働時間」かもしれません

医療・介護の現場では、白衣や制服への着替えが日常です。多くの職場で「着替えを済ませてから打刻する」という運用が行われています。

でも、ちょっと待ってください。その着替えの時間、本当に労働時間に入れなくていいのでしょうか。

顧問先の人事の方から「判例を見て、就業規則を書き換える必要があると気づきました」という相談をいただいたことがあります。今日は、その判例をできるだけわかりやすく噛み砕いてお伝えします。

FROM MY EXPERIENCE

私も、そういう職場で働いていました

平成の時代、私は銀行に勤めていました。制服がありましたので、出勤したら着替えてから業務に就きます。着替えの時間がある分、その分だけ早く出勤する必要がありました。

でも当時、その着替え時間は労働時間ではありませんでした。「早く来て着替えるのは当然」という感覚が職場に染みついていたように思います。

今振り返ると、労働時間でした。社労士になって勉強を始めた時に分かったことでした。私が銀行にいた頃は、次の判例よりも10年以上あとでしたが、それを知らなかったのです。こんなに有名な判例なのに。

LANDMARK CASE

最高裁が示した答え——
三菱重工業長崎造船所事件

1999年(平成11年)の最高裁判決です。造船所で働く従業員たちが、「着替えや保護具の装着にかかる時間も労働時間に含まれるはずだ」として賃金を請求した裁判です。

この事業所では、作業服はもちろん、保護具・工具の装着が義務付けられていました。怠ると懲戒処分を受けたり、成績査定に影響して賃金が下がることもありました。そして、就業規則には「始業時刻に実作業を開始すること」と定められており、着替えはその前に済ませておくよう求められていたのです。

つまり、着替えの時間は「所定労働時間の外」に置かれていました。でも、最高裁はこう判断しました。

最高裁の判断

作業服・保護具の装着が義務付けられており、違反すると不利益を受ける状況であれば、その着替えの時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、労働基準法上の労働時間に該当する

「始業時刻に間に合うように着替えてこい」と会社が求め、それに従わなければ不利益を受けるなら、その着替えは会社の命令で行っているのと同じ——そういう考え方です。

KEY CONCEPT

労働時間かどうかは、
「義務かどうか」で決まる

この判例が示した重要な考え方があります。労働時間とは何かについて、最高裁はこう定義しています。

「労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、就業規則や労働契約等の定めにかかわらず、客観的に判断される」

つまり、「就業規則に労働時間と書いていないから労働時間ではない」という主張は通らない、ということです。実態として使用者が命じているかどうかが問われます。

整理すると、着替えが労働時間になるかどうかのポイントはこうです。

労働時間になる

会社が指定した制服・保護具の着用を義務付けており、違反すると指導・懲戒・査定への影響がある場合

ならない場合も

任意で着替えている、または自宅から制服を着てきてもよい場合など、義務の度合いが低い場合

※実態によって判断が異なりますので、個別の状況は専門家にご相談ください。

FOR MEDICAL WORKPLACES

医療・介護の現場に当てはめると

医療・介護の職場では、白衣やスクラブの着用が義務付けられているケースがほとんどです。感染防止の観点からも、私服での勤務は認められていません。

こういった職場で「着替えてから打刻」という運用をしている場合、その着替え時間は労働時間に含まれる可能性があります。もし着替えに10分かかるとして、それが労働時間外とされていれば、毎日10分×出勤日数分の未払い賃金が積み上がっていることになります。

就業規則に「着替えの時間の取り扱い」が明記されていない職場は、今一度見直してみることをおすすめします。

TAKEAWAY

「当たり前」を、一度疑ってみてほしい

「着替えてから打刻するのは昔からの習慣」という職場は、今でも少なくありません。でも、法的には「習慣だから」は理由になりません。

今回の判例を知って就業規則を見直した顧問先の人事の方のように、「知っている」ことが最初の一歩です。判例の存在を知らないまま運用を続けていると、後になって大きなリスクになりかねません。

着替えの時間をどう扱うか、打刻のタイミングをどこにするか——就業規則にきちんと落とし込んでおくことが、スタッフとの信頼関係を守ることにもつながります。

着替え時間の労働時間該当性、就業規則への明記、打刻ルールの整備は社労士にご相談ください。医療・介護現場の労務に詳しい社労士が対応します。打合せはオンラインで、大阪から全国対応しています。

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