退職・採用シリーズ 前編
「辞めてもらいたい」と言われて、
すぐ解雇に動かない理由
― 退職勧奨という選択と、面談シナリオの作り方
「うまくいかない社員に、辞めてもらいたい」。このご相談を受けたとき、弊所がいきなり「では解雇しましょう」と動くことはありません。
「え、解雇できないんですか」と驚かれる経営者さまもいます。でも、そこで立ち止まることが、後になって会社を守ることに直結しています。むしろ、ここからが社労士の仕事の本番です。
前編では、ご相談を受けてからの"判断"と、面談シナリオづくりまでをお見せします。
まず、「切る」前に整理する
ご相談の多くは、感情が先に立っています。無理もありません。「もう限界だ」「何度言っても変わらない」——そこまで追い詰められてから、ようやくご連絡をいただくことがほとんどです。
「うちのケースは明らかにダメな社員だから、解雇できるでしょう」
そう思っておられる方も多いです。でも私たちはまず、事実を時系列に並べ、どの枠で考えるべきかを見極めます。
懲戒解雇/普通解雇/雇止め/退職勧奨——入口が違えば、必要な準備もリスクも全く変わります。就業規則はあるか、周知されているか、指導の記録は残っているか、労働条件通知書に何と書いてあるか。
「そんな細かいことより、早く動いてほしい」というお気持ちはよく分かります。でも、ここを確かめずに動くのは、設計図を見ずに家へ手を入れるようなものです。後から取り返しのつかない傷になることがあります。
急ぎたい気持ちを受け止めながら、私たちはまずここを丁寧に確認します。それが、最終的に一番早い道です。
なぜ「解雇」でなく「退職勧奨」を選ぶことが多いのか
日本の法律では、解雇のハードルはとても高く設定されています。客観的に見て合理的で、社会通念上も相当だと言えなければ、後から覆ることがあります。記録の乏しいケースでは、なおさらです。
「でも、退職勧奨って断られたらどうするんですか? 向こうが応じなければ意味がないんじゃ……」
そう思われた方、鋭いです。たしかに、退職勧奨は相手の合意が前提です。強制はできません。でも、それゆえに「合意した」という事実が残り、後から「解雇された」と争われるリスクがずっと低くなります。
弊所が多くの場面で退職勧奨(話し合いによる合意退職)を軸に組み立てるのは、会社は争いを長引かせず穏便に区切れ、働く方も解雇の経歴を残さず次へ進めるからです。
双方の傷が浅い着地を、まず探すのです。
ただし退職勧奨は、進め方を誤ると「強要された」と後で覆ります。だからこそ、当日の運び方が命になります。
ヒアリングで"危ない一言"を見つけ、それを言わずに済むシナリオにする
ここが、弊所がいちばん手をかける部分です。
経営者さまからお話を伺っていると、ご本人は無自覚のまま、言葉の端々に"危ない一言"が顔を出します。「社会人として」「常識でしょう」「いい大人が」——ふだんは何気ない言葉でも、退職の面談でこれが出ると、相手は一瞬で「追い込まれた」「人格を否定された」と受け取ります。
「でも、台本を読み上げるなんて、不自然じゃないですか? ロボットみたいで、かえって相手に気づかれませんか?」
実は逆です。面談の場では、経営者さまは必ず緊張します。緊張した状態で「考えながら話す」と、感情が混ざりやすくなります。あらかじめ用意された言葉を目で追って読む方が、むしろ落ち着いて、冷静に進められるのです。
だから私たちは、ヒアリングで見えたその方の口ぐせや"地雷"を踏まえて、それを一言も言わずに最後まで進められる逐語のシナリオをお作りします。その会社・その社員・その経緯に合わせた、当日そのまま読み上げられる台本です。
当日、声に出して読むセリフ(NGワードは初めから入っていません)
言ってはいけない言葉の一覧
「こう聞かれたら、こう返す」の想定問答
相手の話を聞く順番、録音の伝え方、誰が読み役になるか
語るのは、感情でも人格でもなく、事実(いつ・どの場面で・何があったか)だけ。「目で追って読むだけで、危ない言葉を踏まずに進む」状態にしてお渡しします。
「ここまでやってくれるとは思っていませんでした」——そう言っていただけることが、よくあります。
NEXT — 後編
後編は、「合意をその場で形にする」話です
話がまとまったその場で使う必須書類と、結果を分ける細部、そして「本当はもっと手前で防げる」採用の入口についてお話しします。
「辞めてもらいたい」と思ったとき、解雇の前にご相談ください。退職勧奨の進め方・面談シナリオの作成まで、社労士が段取りします。打合せはオンラインで、大阪から全国対応しています。
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