年金・役員報酬の落とし穴
2026年法改正後も、役員報酬が高いなら
「繰上げ受給」してはいけない理由
先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。
「来月60歳になるし、年金を早めにもらおうか迷っているんだけど」
結論を先にお伝えします。
「社長、今は絶対に手続きしてはいけません!」
全力で止めました。なぜなら、社長の報酬額でそれをやると、「年金額が一生涯減る上、手元にはほとんど一銭も入ってこない」という悲しい事態になるからです。
口頭で説明すると少し複雑なので、社長のために解説動画を作ってお見せしたところ、「繰上げやめて、役員報酬を見直します!」と即決断。喜んでいただけました。今日は、その内容をブログでもシェアします。
2026年4月 法改正
「年金をもらいながら働きやすく」なりますが……落とし穴があります
まず、良いニュースからお話しします。令和8年(2026年)4月から、働きながら年金をもらう際のルール(在職老齢年金制度)が変わります。
これまで(令和7年度まで)
51万円
を超えるとカット
2026年4月から
65万円
まで緩和
「おっ、基準が65万円に上がるなら、俺も年金をもらえるんじゃないか?」
そう思われるかもしれません。でも、ここには高額報酬の役員ならではの落とし穴があります。動画で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
解説動画(約7分)
年金を繰上げするべき?
速度変更できます
モデルケース
A社長の場合でシミュレーションします
A社長のプロフィール
年齢:もうすぐ60歳(2026年1月に還暦)
役員報酬:月額66万円(賞与なし)
家族:3歳年下の奥様あり
検討中:60歳から早めにもらう「繰上げ受給」
計算してみると
繰上げ受給をすると、2つのことが起こります
A社長が60歳で年金受給の手続きをすると、以下の2つが同時に発生します。
問題① 一生涯の減額
本来65歳でもらう年金を60歳からもらうため、年金額が24%カット。一度決まると死ぬまでこの金額になります。
問題② 支給停止
役員報酬が高いため、さらにそこから年金が没収(支給停止)されます。
仮に、A社長の本来の厚生年金が月10万円だとして計算してみましょう(改正後の65万円基準)。
10万円 × 76% = 7万6千円(24%カット後の年金額)
報酬(66万円)+ 年金(7.6万円)= 合計73万6千円
→ 新基準の65万円を大きくオーバー
(73.6万円 - 65万円)÷ 2 = 4万3千円(没収される額)
7.6万円 - 4.3万円 = たったの3万3千円
「本来10万円の権利を一生涯24%カットする」という重い決断をして、手元に入るのは月3万円ちょっと。役員報酬66万円が毎月入ってくる中で、将来の年金を減らしてまで今すぐ受け取る必要があるでしょうか。
もうひとつの落とし穴
さらに「奥様の加算」も消えるリスクがあります
A社長には3歳年下の奥様がいらっしゃいます。通常、社長が65歳になったとき、要件を満たせば「加給年金(年金版の家族手当)」がプラスされます。
ところが、ご自身の厚生年金が全額ストップしてしまうと、この奥様分の加給年金も一緒にストップ(全額カット)されてしまうのです。
では、どうすれば?
社長がとるべき正解ルート
役員報酬66万円を受け取り続けるのであれば、今の正解はこれです。
60歳での繰上げ受給はしない(我慢する)
65歳まで待つ
65歳になってから、「役員報酬を少し下げて年金をフルにもらう」か「報酬を維持して年金の一部を諦める」かを改めて検討する
役員報酬を大きく下げる、という選択肢もあります。いずれにせよ、役員報酬と年金の関係を整理してから動くことが大切です。
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