こんにちは、社会保険労務士の竹本です。
先日、顧問先の社長から、
「来月60歳になるし、年金を早めにもらおうか迷っている」
というご相談を受けました。
結論は、
「社長、今は絶対に手続きしてはいけません!」
全力で止めました。
なぜなら、社長の報酬額でそれをやると、
「年金額が一生涯減る上、手元にはほとんど一銭も入ってこない」
という、悲しい事態になるからです。
この仕組み、実は2026年(令和8年)4月からの法律改正が大きく関わっています。
口頭で説明すると少し複雑なので、
社長のために解説動画を作ってお見せしたところ、
「繰上げやめて、役員報酬を見直します!」
と即決断♪喜ばれました。
今日は、その動画と解説内容をブログでもシェアします。
同じような立場の経営者様は、ぜひご覧ください。
<7分動画>
年金を繰上げするべき?
(速度変更できます)
■ 2026年4月から「年金をもらいながら働きやすく」なりますが…
まず、良いニュースからお話しします。 令和8年(2026年)4月から、働きながら年金をもらう際のルール(在職老齢年金制度)が変わります。
これまで(令和7年度まで)は、お給料と年金の合計が「51万円(※)」を超えると年金がカットされていました。 これが2026年4月からは「65万円」まで緩和されます。
「おっ、基準が65万円に上がるなら、俺も年金をもらえるんじゃないか?」
そう思われるかもしれませんが、ここには「高額報酬の役員」ならではの落とし穴があります。
■ 今回のモデルケース:A社長の場合
■ 繰上げ受給のシミュレーション
A社長が60歳で年金受給の手続きをすると、以下の2つのことが起こります。
-
一生涯の減額
本来65歳でもらう年金を60歳からもらうため、年金額が24%カットされます(一度決まると死ぬまでこの金額です)。 -
支給停止の計算
役員報酬が高いため、さらにそこから年金が没収(支給停止)されます。
│実際の計算(改正後の65万円基準で計算)
仮に、A社長の本来の厚生年金が月10万円だとします。
-
ステップ1
繰上げによる減額 10万円が24%カットされ、年金は7万6千円になります。
-
ステップ2
役員報酬との調整(在職老齢年金)
報酬(66万円)と年金(7.6万円)を足すと、
合計73万6千円です。
これは新基準の65万円を大きくオーバーしています。
計算式: (合計73.6万円 - 基準65万円)÷ 2 = 4万3千円(没収される額)
-
ステップ3
手元に残る金額
減らされた年金(7.6万円)- 没収額(4.3万円)= たったの3万3千円
│結論:大損です
いいかがでしょうか。 「本来10万円の権利を一生涯24%カットする」という重い決断をして、手元に入るのは月3万円ちょっと**です。
役員報酬66万円が毎月入ってくる中で、将来の年金を減らしてまで、今すぐこの3万円を受け取る必要があるでしょうか?
■ さらに「奥様の加算」も消えるリスク
もう一つ落とし穴があります。 A社長には3歳年下の奥様がいらっしゃいます。通常、社長が65歳になった時、要件を満たせば「配偶者加給年金(年金版の家族手当)」がプラスされます。
しかし、ご自身の厚生年金が全額ストップしてしまうと、この奥様分の加給年金も一緒にストップ(全額カット)されてしまうのです。
■ 社長がとるべき正解ルートは?
◎役員報酬をグンと下げる。
◎役員報酬66万円を受け取り続けるのであれば、今の正解はこれです。
- 60歳での繰上げ受給はしない(我慢する)
- 65歳まで待つ
65歳になってから、改めて「役員報酬を少し下げて(年金と足して62万円以下にして)、年金をフルにもらう」のか、それとも「報酬を維持して年金を一部諦める」のかを検討するのが賢明です。
■ 「私の場合はどうなる?」と思ったら
今回の例は、ねんきん定期便を見るまでもありませんでしたが、
「ねんきん定期便」がお手元にあれば、より正確なシミュレーションが可能です。
年金の仕組みは、お一人お一人の「報酬額」や「加入期間」によって全く結果が異なるからです。
「自分の役員報酬だと、年金はいくら止まるのか?」
「いつからもらうのが一番トクなのか?」
気になった方は、ぜひ一度ご相談ください。
動画でシミュレーションし、わかりやすく、社長の「最適解」を導き出します。
スパツオーネ社労士Web 竹本まで気軽にお問い合わせください。
わかりやすい動画コンテンツで従業員さまにもさまざまな制度の解説をしています。

コメントをお書きください