退職・採用シリーズ タイミング編
相談すべきタイミングは、
思っているよりずっと早い
― その不利益に、経営者ご自身が気づいていない
社員のことで弊所にご相談に来られるとき、多くの経営者さまは「もう、最後の面談をどう進めるか」という段階まで来ています。
「ようやく腹を決めた。あとは社労士に段取りしてもらえばいい」——そう思っておられる方がほとんどです。でも正直に申し上げると、その時にはもう、小さなボヤはあちこちで起きています。
本当のご相談どきは、それより前に、何度もあったのです。今日は、そのタイミングを3つ、お伝えします。
採用を決める前
最初の相談どきは、採用の前です。
「採用前に社労士に相談するなんて、大げさじゃないですか? 面接して、良さそうだったら雇う、それだけでしょう」
ほとんどの経営者さまが、最初はそう思っておられます。でも「採用しました!」というご報告をよくいただきますが、本当は採れそうだという段階で一度ご相談いただくのが本筋です。
正社員でなくても、アルバイトでも、もらっておくべきものがあります。履歴書、住民票、そして簡単な適性テスト。さらに、労働条件通知書に、退職や解雇の事由まできちんと書いておく。これだけで、あとで打てる手がまるで変わります。
「そんな書類、雇ってからでもいいんじゃ……」と思われましたか。でも、雇った瞬間、相手は労働者として法律に守られます。入口でできることが、出口では何倍もの労力になって返ってくるのです。
入口こそ、いちばん静かで、いちばん効くタイミングです。
自宅待機を"命じる"前
次の相談どきは、感情が高ぶった、まさにその瞬間です。
うまくいかない社員に対して、つい口をついて出る言葉があります。「もう来なくていい」「1週間、家で待機して」——お気持ちはよくわかります。もう限界だという状況で、冷静でいろというほうが無理です。
「でも、自宅待機くらい普通に命じますよね? うちは何もおかしいことしていません」
実は、この何気ないひと言が、思わぬ不利益を生みます。
「もう来なくていい」
解雇と受け取られかねません
「1週間待機して」
休業手当(平均賃金の6割以上)が会社負担になります
感情で発したひと言が、そのまま支払い義務や、「解雇された」という証拠になってしまう。「そんなつもりじゃなかった」という言い訳は、残念ながら通りません。
だから、自宅待機を命じる前に、どうか一本だけお電話ください。同じ「休んでもらう」でも、伝え方ひとつで、会社が負うものは大きく変わります。
こじれて、面談を意識した時
そして、いちばん多いのがこのタイミングです。弊所にご相談が来るのも、ほとんどがここです。
関係がこじれ、「もう辞めてもらうしかない」と腹を決め、最後の面談を意識した瞬間にご連絡をいただきます。このとき、弊所はもちろん全力で段取りします。
「ここまで来れば、あとは社労士に任せればなんとかなりますよね? むしろ今ご相談できてよかったです」
そのお気持ちはよく分かります。でも正直なところ、ここに来るまでに、すでにいくつもの不利益が静かに積み上がっています。
取り違えられた記録、感情のこもったメッセージ、累積した休業手当、「解雇された」と受け取られかねない発言。そのどれもが、後の話し合いで会社の足を引っ張ります。
そして多くの場合、経営者ご自身が、その損に気づいていません。「自分は何も悪くない」と思っておられる。それは間違いではないかもしれません。でも、「悪くない」と「損をしていない」は、別の話です。
気づかないうちに、不利益だけが膨らんでいく——これが、いちばん怖いことです。
おわりに
そのひと言を言う前の、ほんの数分のご相談が半年後を守ります
ご相談に、早すぎるということはありません。「こんなことで相談していいのか」と思う段階が、実はいちばん打てる手が多い段階です。むしろ早いほど、会社の傷は浅く済みます。
「採用しました」の前に
「もう来なくていい」と言ってしまう前に
こじれて腹を決める、ずっと手前で
そのひと言を言う前の、ほんの数分のご相談が、半年後の会社を守ります。
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